手足の冷えについて
投稿日:2020.12.07
健常な人でも、寒いときには手足の先が白くなり痛くなることがあります。また、しもやけのように色が悪くなることもあります。これは寒さによって血液の流れが悪くなるための正常な生体反応であり、治療の必要はありません。しかし、寒くないときでも血流が悪くなり、痛みや冷えを感じることがあります。これらは手足に行く血管の一部が物理的に狭くなったとき、温度変化やストレスによる血管の収縮反応が病的に激しいときなどに起こり、ひどい場合には何らかの治療が必要です。また静脈疾患でも冷えを感じることがあります。
急性動脈閉塞症
足の冷感を起こす病気のうち一番急を要する疾患です。緊急に適切な治療を行わないと足を切断しないといけなくなる可能性もあります。以下の症状があれば、ためらうことなく緊急で受診、または救急車を呼んで下さい。
突然の足先の激しい痛み
足先が冷たく蒼白になる
足先の脈が触れない
進行すると足先の知覚が鈍くなってくる
更に進むと足先が麻痺して動かなくなる
心臓で出来た血栓や血管の中に貯まったゴミが剥がれて流れて行き、いろいろな場所の動脈を詰めてしまう事があります。動脈が詰まった先へは血液が届かなくなるために、その先の組織は壊死してしまいます。頭の動脈が詰まると脳梗塞、心臓の動脈が詰まると心筋梗塞、足の動脈が詰まると下肢の急性動脈閉塞と呼ばれる病気になります。足の動脈が詰まった場合には上記5つの症状が起こります。超音波検査、血管年齢検査などで診断します。緊急に手術の出来る病院へ搬送し、発症から8時間以内に血栓を取り除く手術を行わないと足を切断しないといけなくなる可能性が高くなります。更に時間がたつと腎不全などを起こし命に関わる状態になります。特に急いで受診してもらうことが大切です。
閉塞性動脈硬化症
加齢による動脈硬化によって、足に行く動脈が少しずつ詰まってしまう病気です。10年くらいかけてゆっくり詰まるので症状の進行も比較的緩やかです。はじめは足先の冷えやしびれが起こります。やがて少し歩くと足が冷えて痛くなり、しばらく休むと回復するという症状が出てきます。この症状は間欠性跛行(かんけつせいはこう)と呼ばれ、この病気に特徴的な症状です。進行すると安静時にも痛みを感じるようになり、更に進行すると足先の壊疽を起こし、足を切断する必要が出てくることもあります。超音波検査、血管年齢検査などで診断できます。治療は、足の保温や運動療法、血管を広げる薬や血液をサラサラにする薬の内服、点滴などを行いますが、進行した場合にはカテーテル治療やバイパス手術が必要となります。
バージャー病
閉塞性動脈硬化症が高齢者に多い病気なのに対し、この病気は比較的若い(10~20台)男性に多い病気です。四肢の動脈が閉塞してその先の組織が壊死してしまう指定難病です。閉塞の原因は動脈に炎症が起こってしまうためです。なぜ炎症が起こるのか原因は不明ですが、喫煙や歯周病などと関連する事がわかっています。超音波検査、血管年齢検査などで診断できます。血管を広げる薬や血液をさらさらにする薬の内服、点滴などを行います。
レイノー病(レイノー症候群)
寒いときや緊張したときに指先が蒼白または紫色になることをレイノー現象と言います。これは指先の動脈が寒さやストレスによって急激に収縮するために起こります。症状が軽度の時には経過を見ていても大丈夫ですが、ひどくなると治療が必要です。レイノー現象は原因不明のもの(レイノー病と呼びます〉と何か他の病気があって起きる場合(レイノー症候群と呼びます)の2つに分けられます。レイノー症候群の原因を調べていくと、強皮症やリウマチなど膠原病と呼ばれる病気が見つかることもあります。レイノー現象があれば早めに検査を受けることが大切です。治療は生活を工夫して寒冷刺激やストレスを避けること、原因疾患の治療、血管を広げる薬や血液をさらさらにする薬の内服、点滴を行います。
下肢静脈瘤
下肢の静脈がこぶ状になり、血液が心臓に戻りにくくなる病気です。血液が下肢にうっ滞するために、足がだるい、重い、かゆい、こむら返りが起こる等の症状が起こります。ときに、足がほてる、冷える等の症状も起こります。治療は圧迫療法などを行いますが、大きな場合には根本的には手術が必要となります。
病的な冷えではない場合
上記のような病気でない場合でも、しばしば冷え症は起こります。体質、運動不足、ストレス、自律神経の乱れ、ホルモンバランスの乱れなど様々な原因が考えられます。まずは上記の様な深刻な病気ではないことを確認することが必要です。治療は、生活を改善して原因を取り除くことが一番ですが、症状が強くて生活に支障が出る場合には、漢方薬や血管拡張剤などの内服治療を行うことも出来ます。
手足の冷えには様々な原因があります。気になることがあればお気軽にご相談下さい。